川口元郷　内科　循環器内科　川口領家循環器内科クリニック

健康診断の結果で中性脂肪(TG:トリグリセライド)が高値であると指摘された方も多いかも知れません。
正常値は150mg/dL未満です。高値になればなるほど血清は白濁します。
高コレステロール血症と違い、高中性脂肪血症の重要性はピンとこないものです。　

中性脂肪は食物からの摂取や肝臓で合成され、体を動かすエネルギー源となり体にとっては必要な物質です。
しかし、増えすぎると肝臓での蓄積が多くなりすぎ脂肪肝（フォアグラの様なもの）を惹起し、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積もされてメタボの原因にもなります。

もともと、中性脂肪は人類進化の過程において飢餓を乗り越えるために必要なエネルギー源でした。
体内に蓄えた中性脂肪を燃やして、飢餓の際にはエネルギー源としたのです。人類の歴史では、ヒトが飢餓に陥ることは日常茶飯事で、その飢餓を乗り越え生き残るためには、体の防御反応として中性脂肪を蓄えることが重要で簡単だったのです。
ところが、現代は高カロリーの食べ物が豊富にある飽食の時代となり、運動もしなくなりました。飢餓という状態はごく一部以外は存在しなくなり、逆に中性脂肪が溜まり過ぎるという皮肉な結果となり、悪影響だけが出て病気に発展するという状況になっています。

中性脂肪が高くなりすぎると、動脈硬化が促進され、極端に高値になると膵炎の危険性も生じます。
また脂肪肝が悪化すると肝硬変や肝がん発症の危険性も指摘されています。
中性脂肪の蓄積はアルコール過剰摂取や高カロリーな動物性脂肪の取りすぎ、炭水化物過多の食生活や運動不足で促進されます。
メタボ体型の人のほとんどが、高中性脂肪血症を合併していると言っても過言ではないと思います。
食生活の是正や体重の適正化が改善のポイントとなりますが、改善なければ医薬介入も必要となります。