人工呼吸器とエクモ
今回も予定を変更して、人工呼吸器とエクモに関して話してみたいと思います。いずれの機械も重症の呼吸不全に使用する機械です。
肺炎などの罹患により肺の機能が著しく低下した場合には呼吸困難感を自覚します。肺の機能は以前にもお話しましたが、血液中の酸素と炭酸ガスの交換をすることが主です。その肺が壊れ機能不全に陥るとガス交換ができなくなり血中の酸素濃度が低下して、呼吸困難感を生じるのです。そのような場合には、体内の酸素濃度維持を目的に酸素投与をまず開始します。しかし、酸素投与の濃度を上げても酸素化が十分行えなくなる重篤な呼吸不全に進行すると次の段階として人工呼吸器の使用となります。
人工呼吸器とは、呼吸に関して機械が患者さんの吸気や呼気を制御して呼吸管理を自動的に行ったり、または一時的な呼吸補助を行うことのできる機械です。酸素投与も行えます。様々なモードがあり、意識のある状態でも使えますし、完全に意識を落として全ての呼吸を機械に委ねることもできます。重篤な患者さんに人工呼吸器を使用する場合には、気管内にチューブの挿入を行う気管内挿管が必要となります。また、気管内挿管が長期になった場合には気管切開術も必要となります。人工呼吸器を使用してもなお酸素化が達成できない最重症の呼吸不全に使用するのがエクモです。
エクモは体外循環と人工肺を用い、患者さん自身の血液を体外にポンプを用い誘導して、そこに装着した人工肺を介し酸素化した血液を再び体内に還流するというシステムです。患者さんの痛んだ肺を休ませ、その間に肺の機能回復を目指すものです。集中治療室などの特殊な病室での使用となります。体外循環を行うこととなるので、専門知識や豊富な経験を有するスタッフが必要となり、どこの病院でも行えるわけではありません。私も東京女子医大勤務時代にエクモに関わったことがありますが、エクモを開始すると病院に泊まり込み患者さんに張り付いていました。それだけ手をかけても、当時エクモから離脱できた人は少なかったと記憶しています。しかし、エクモが最後の砦となり離脱後に社会復帰した方もありました。
心臓は血液を循環させるポンプの役割だけ?ですが、肺はガス交換以外にも高度な機能を持つ、いわば高等な臓器でもあります。肺が壊れてしまうと、ある意味心臓が壊れるよりも大変なのです!肺を少しでも壊さないために、喫煙習慣のある方には是非禁煙ををお勧めします。
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